ひきこもりは治療が必要?
ひきこもりがニュースで問題になっていたりしますが、医療機関にかかる必要はあるでしょうか。
結論から言うと「ひきこもりを解決したい、社会復帰したい」と思わない限りは医療機関が関わることができません。
例えば、引きこもって自分の好きな事をしたり、
引きこもってできる仕事やその状態に満足し、
自立した生活ができているならそのままでも問題ないでしょう。
ですが、もし「社会復帰がしたい」「ひきこもりをなんとかしたい」と
本人が苦しんでいたりしている場合は、医療機関を受診し、解決する必要性があります。
ひきこもりの定義について
そもそも何をもって引きこもりと判断されるのか?
それを明確にする、ひきこもりの定義としては以下の通りです。
- うつ病や統合失調症などの精神疾患とは考えにくい状態
- 就学・就労をしていない状態
- 家族以外の他人と対人関係を築かない状態
- その状態が6ヶ月以上続いている状態
これらの条件が揃った時に「ひきこもり」とされます。
「対人関係を築かない」とありますが、一人でならコンビニやスーパーでの買い物、
映画館で映画の鑑賞などに行けても、日常会話を交わすなど他人との交流がないと
言えるような場合もひきこもりと判断されます。
医療機関を受診する必要なんてあるのか?
「ひきこもり程度で医療機関を受診するのは大げさでしょう」と思う方もいるのではないでしょうか。
たしかに、うつ病のようなひどい気分の落ち込みや不眠、
統合失調症のような幻覚・幻聴のような症状はないケースもあります。
それなら医療機関で治療なんて大げさと思うのも無理はないでしょう
ですが、もしひきこもりが長期で続いる場合は、放置しても改善は見込めません。
そして、本人が自立できていないのであれば、自立に向けた対策が必要です。
「8050問題」に見る対策の必要性
「8050問題」というのをご存知でしょうか。
数字は年代を意味しそれぞれ「80代」「50代」を意味しています。
もっと具体的に解説すると、80代の親が50代のひきこもりの子の生活を支えるという問題が「8050問題」です。
ひきこもりの問題が表面化し始めたのが1980〜1990年代であり、その時に若者だった人たちが40、50代、
それを支える親が70〜80代となりひきこもりが高齢化してきました。
それにより、生活が立ちいかなくなり、社会的にも孤立をするといった深刻なケースがここ最近目立っています。
ひきこもりが長期化することで、本人だけでなく、それを支える家族にとっても深刻な問題となり、
場合によっては支える側と支えられる側が共倒れしてしまうケースもあります。
そのため、何かしらの早急な対応が必要な場合もあります。
「ひきこもり」は恥なのか?
中には「ひきこもりが恥」と考えている人もいるはずです。
先程紹介した母娘も地域のつながりを避け、医療や福祉の支援を受けていなかったあたり、そう考えていたのではないでしょうか。
2016年の内閣府の実態調査によると、
ひきこもり状態の人たちは全国で54万人いるというデータがあります。
ですが、40歳以上の方は対象としておらず(39歳以下を対象とした数値であるということ)、
40歳以上を入れると100万人を超えるのではないかと指摘する専門家もいます。
ここから考えると、決して他人事ではなく、明日は我が身とも言えるような事でもあります。
全国的に大きな問題であり、不登校や職場環境や労働条件がきっかけでなったりするケースもあり、
国民が取り組まなくてはいけない問題であると言えます。
そんな状況の中、「恥」と思い隠す事で事態が悪化し、
様々な問題が起こってしまう可能性がある以上
早急に解決の必要な問題であり、「恥」と思う必要がないと言えるのではないでしょうか。
家族間で話し合って解決、改善に向かっていけるならそれに越したことはありませんが、
そうでなければ福祉の支援や医療機関の受診による支援も必要になります。
ひきこもりは併発症状の可能性も
ひきこもりはうつ病や適応障害、
統合失調症といった精神的な病気により、ひきこもりになってしまった可能性もあります。
例えば職場の人間関係などでうつ病になり、社会復帰を目指したものの、
それが叶わず自己嫌悪に陥ってひきこもり、そこから抜けだせない場合もあります。
引きこもっているのには理由があり、本人もどうすることもできず
「家族に迷惑をかけている」
「こんな自分は恥だ」
「生まれて来なければ良かった」
などと考え、恥と葛藤に苦しんでいます。
ひきこもりを単にひきこもりとしてとらえるのではなく、
どういった結果引きこもることになったのかということについてもフォーカスを当てる必要性があるでしょう。
それが引きこもっている本人の理解に繋がるでしょうし、
もし医療機関での支援が必要になった時の大きな助けになるはずです。
ひきこもりの医療機関受診のススメ
結論から言うと、ひきこもりは医療機関での受診が必要だと言えます。
その理由は以下の通りです。
- 治療や支援が必要なときに適切な処理ができる
- うつ病、統合失調症の場合、その治療も可能
- 医師などの医療者である第三者が関わることで、社会との接点を持つことができる
- 本人だけでなく家族の支援も同時に可能
- 同じ境遇の人と接することが精神的な支えになる
「医療機関を受診する」と言うと、薬を飲まされたり何かされると思う人も少なくないと思いますがそうではありません。
もちろん、うつ病を併発しているなど精神疾患の場合は服薬による治療が必要なケースもあります。
ですが、精神疾患と診断され治療が必要なケースではない場合でも、
医師などの医療者や同じ境遇の人である第三者が関わることで、
社会との接点を持ち、支援を受けやすくする環境を作るのは非常に大切です。
こういった点でも医療機関への受診の意義は十分にあります。
それが結果的に本人を支える家族の支援にもつながりますし、
医療機関以外の福祉サービスを受けるにしても、医療機関の受診をしておく事はそれをスムーズにしてくれます。
ひきこもりで最も重要なのはこの点であり、
支援を受けやすくする環境を作ることは、先程の8050問題を解決する一歩になります。
医療機関を受診するという一つの行動が、
その先を大きく変える最初のキッカケになると考えています。
「治療をする」という考えではなく「今の状態をより良くするキッカケ」として医療機関の受診を考えてみてはどうでしょうか。
このように視点を変えるだけでも、次に起こす行動が変わってくるのではないでしょうか。
受診する医療機関はどこでもいいわけではない
「医療機関に受診をする」というとかなりアバウトな表現と感じる方もいるかもしれません。
その通りで、どこでも良いから医療機関を受診すれば良いというわけではありません。
ひきこもりの対策に力を入れているような医療機関でなければ、
先程紹介した医療機関受診のメリットを得る事は難しいでしょう。
当院ではひきこもりの対策に力を入れており、医療機関での治療が大切という観点で診察に当たっています。
本人の理解が得られない場合でもご相談ください
家族の方がひきこもりをしている本人に
医療機関への受診を促してもそれを受け入れない方もいらっしゃいます。
その場合でも、家族だけ※でのご相談も対応できます。
※家族だけの相談には別途費用がかかることがあります
相談はもちろん、家庭内での接し方のアドバイスなどを
させていただく事で、受診をスムーズにするサポートも行なっています。
実際、医療機関への受診に抵抗を示していた方でも家族のサポートによって
医療機関への受診、社会復帰に向けたサポートができているケースもあります。
家族相談によるメリットは、アドバイス以外に以下の事があげられます。
- 家族から間接的に情報を得ることで、受診のタイミングを考えられる
- 医師がひきこもりへの対策の方法を練ることができる
- 継続的なアドバイスにより親子関係の改善を図ることができる
往診も行なっているので、受診が難しいケースの対応も可能
家を離れることができない、体が不自由で外に出られないなど、当院へ来るのが難しいケースもあると思います。
その場合でも、往診を行なっているので直接ご家庭に出向いての治療も可能です。
このように当院はひきこもり支援に力を入れた治療を行なっています。
ひきこもりで悩まれている方やご家族の方は一度ご相談ください。